廃村熱田地区でイワナ釣り

よく晴れた日のイワナ釣り。

少し前に訪れた時、川の流れにスッと走る黒い影を確認していた。

地区の入り口にある橋の近くから入渓し、川虫を数匹捕まえ釣り開始。

20センチほどのイワナがすぐに釣れた。一匹目かつ小さいので放流。穏やかな顔のイワナだった。

沢は明るく水は綺麗でよい天気。気分上々で遡行開始。

次のポイントでもすぐに当たりがあり、沢のすぐ脇を道路が走る環境にあって、源流釣りとは異なるあまりの簡単さに腕が上がったのかと勘違いしそうになる。

いやいや、そんなことはあり得ないと思い直しさらに上流へ。

またもや釣れる。今度は25センチ程の夕飯サイズ。しかも腹掛かり。

なんとも食いっ気のあるイワナだなぁ、こんな来やすい場所なのにスレてないのか?昨日の晴れ間はさっぱりだったのに、何が違うのか?と疑問符が湧いてきた。

とりあえず夕飯用に三匹釣れたらやめようと思い、小物は放流しながら釣り上がる。

2匹めは小さかったが針を飲まれており、命をいただいた。

一つ目の橋を越え、小さな滝壺でこれまた簡単に3匹目が釣れた。

釣りの間、近くの道路では車やバイクが何台か通り過ぎていた。気が散った。

三匹目が釣れたところで、取り敢えず沢を見るために上に行こうか迷っていたら、イワナによく似た監視員さんが一直線にやって来た。

入川料金4000円を払い、たくさん浮かんだ疑問符を解消しようと尋ねてみた。

私「簡単に釣れますが、もしかして、放流されてますか?」

イワナおじさん「養殖して沢山放流してますよ。上〜の方まで。大滝二本超えたら、そこからは天然です」

疑問は解消された。腕が上がった訳ではなく、そういうことだったのだ。

途端にイワナ釣りに虚しさが出てきた。遡行する冒険心も減り、薪を集めたり、夕飯の準備をしなくちゃと思い始め納竿した。

いつも通りイワナを捌き、生えていたワサビの葉で包んだ。一本は塩焼き、二本は焼き枯らし用。

どうやら、私はイワナ釣りは好きだが、釣ることよりも、人の手がほとんど入っていない、人の匂いの少ない、人の立てる音がしない源流、その沢の姿が好きだったのだ。そこにいれること、そこでイワナを釣ることが好きだったのだ。

魚を放流した沢でなく、イワナが自然にいることのできる沢が好きなのだ。そんなところにいるイワナは綺麗なだけでなく、顔には優しさより厳しさを感じる。

ただ、食料を得るためだけなら今回みたいなところで十分である。でも山になって沢と一体になって、そこで溶け込むようにあるためには、ここは違う場所だった。

初めて連れて行ってもらった沢で得た感覚は、自分の中でやっぱり、そして以前よりももっとはっきりと生きていた気がした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です