食卓難民

子どもの頃から自分の部屋がない。いま住む家にある自由に使える場所は、山道具置き場である土間の一角と、ノートパソコンを置いている本棚の上のみである。

5年前リフォームした時、わたしの部屋を設計図に載せるかどうか、立ち話程度に話題になったように思うが、忘れてしまった。

空が灰色の今朝、私は食卓難民になってしまった。メインテーブルは娘たちのままごとに占領され、台所のミニテーブルを使いかけたが、妻が洗い物にやってきたので避難することになった。

わたしは、パンを載せた木の皿と、コーヒーの入った赤いカップを持ち次の食卓を探した。

埃除けで被せているランチョンマットに呼び込まれ、たどり着いたのはノートパソコンの上であった。

薄い擦りガラスの窓際にあるここは、まだこの季節、長居するには少し寒い。

それでも椅子を持ってきて食べかけると、パラパラと雨音がし始めた。

加えて窓の外から、さきほど家を訪ねてきた村の男性と、別の女性の話す声が聞こえてきた。内容は聞こえないが、今やりたくないこと上位にランキングする近所付き合いを連想させられた。わたしは、急き立てられるように食べ物を全て口に入れ、また避難を開始した。

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