9月14日土曜日、これ以上ないくらい晴天の中長野県木祖村にある藪原駅を9時に出発し、まずは木曽駒ケ岳へ向かいました。出発地を藪原にしたのは、レース中のチェックポイントだからです。選手のオアシス、スーパーまるとが近くにあることも確認しておきました。
(駒ヶ根に駐車しておけば下山後の着替えを持たなくてよかったのですが、寝坊したので予定の電車に間に合わず、車は塩尻駅周辺に駐車しました。そのために、汗まみれの服で電車に乗るわけにはいかず、ザックを軽くしたいけど着替えもわざわざ持って行くことにしました)
国道19号を南下し、報告書でたびたび目にする2つのセブンイレブンを確認しながら、道の駅手前の交差点を左折して、駒ヶ岳別荘地の中の舗装路を登山口まで歩きました。ここは走り続けるには斜度がきつく、走れるくらいでないと参加できないのかなあとか、別荘欲しいなあなどと考えていました。
標高がすでに1000m位で気温が低く、初秋の風が吹く気持ちのよい道でした。集落内の水路に岩魚らしき魚がおり、環境の良さを感じました。近くの釣り堀から逃げたものかもしれません。
あちこち見ながら気を紛らわせ歩くこと70分。登山口に到着しました。
途中に水場があったようですがわからず、次の水場”力水”に期待し進むことにしました。
今日は早めにストックも出しています。ストックを出す時のイメージは、早月尾根に入る望月選手です。
ここからコースタイム60分の林道だったのですが、想像以上に斜度があり、脚がキツイと言っているのがよく分かりました。
普段からこんな序盤でキツさを感じる事はなく、扁桃が腫れてるから?寝不足?一昨日のジョグで疲れてる?と色んな理由を考えますがどれもしっくりきません。
原因わからぬまま、4.5号目の力水まで歩きました。
水は湧いており、備え付けのカップで1L補給しました。
水を入れたプラティパスから離れた体に冷気が伝わってくる程冷たい水で気分一新したところで、キツさの原因を考え杖をやめてみたところ、あら不思議。登りやすく、脚のキツさも減りました。歩き易さを目的にした杖が、却って足を引っ張っていたようです。
杖を使いこなせる筋力などが不足しているのかもしれません。鍛えます。
さて、この日歩いたのは、福島Bコースという長ーい道でした。そしてずーっと樹林帯。森林限界が来る頃はガスで景色ゼロ。
考えることも無くなり、途中生えている野生のブルーベリーを食べながらもくもくと登り続けました。
北アルプスを越えてきてこれかと思うと、選手の強さにただただ驚くばかりです。
チングルマの花が少し癒しを与えてくれます。
稜線に出たのは14:50頃。晴天が待ってくれていました。登山口から3:25かかりました。

木曽駒ケ岳は宝剣岳に気を取られて登る気力が湧かず、トラバース道でパスしました。沢山の人が来られており、人気のある山であることを感じました。(帰宅して報告書見ると、木曽駒ケ岳はチェックポイントでした(゚o゚;;)気をつけなきゃ)
チェックポイントである宝剣岳は通過必須なのですが、その前にもう一つ行きたい所がありました。
それは宝剣山荘です。宝剣山荘の食事が食べたかったのです。行動食ばかりでお腹が空いていました。
カレーの胃袋を用意して、扉を開けると壁のメニューにはカレーの文字が!しかしその下に食堂メニューは14時まで、と書かれていました。
受付のお兄さんは私の雰囲気を察したのか、帳面をつけながら、食事の提供は終わってますよーと一言。
仕方なく、パン2つにポリッピーとグレープジュースと水を買い、NHKの映像で見たことのある小屋の中をキョロキョロしながらパンをかじりました。
ここでもゆっくりし過ぎないようにして、カレーは14時までと強くインプットし、次なる宝剣岳へ向かいました。
が、その登りのしんどいこと。脚は進みますが力強さや軽やかさが足りません。始めの林道のダメージがまだ残っていました。
石田賢生選手の呼吸の話を思い出し、腹式呼吸をしながら登り切りました。

15:50 宝剣岳山頂です。
絶景の雲海を写真に収め、次の目的地、檜尾岳に向かう準備をしました。
今回の山旅には地形図を8枚用意しており、地図内の山域が終わるタイミングで新しい地図に更新していました。晴れて風の弱い日は入れ替えがしやすいのですが、雨や風の強い時どうするか、考えなくてはなりません。一枚ずつパックした方がいいのでしょうか。とりあえず風が強くなる山頂での更新は控えた方がよさそうです。
16:20 2018年近内選手の地図吹っ飛びシーンを思い出しながら宝剣岳を後にしました。

途中、雲海に沈む太陽に感動しながら休憩も兼ねて登りで写真を撮りました。
この感動を伝えたい人の名前が頭の中に浮かんできます。
途中風が冷たくなってきたのでウィンドシェルを着て、ジップを上げ下げしながら体温調節しながら進みました。
18:15 檜尾岳に着いたのは、日が沈み西の空が青紫色になる頃でした。

先に進むか、すでにテントが何張りか見えている、物の怪の噂のある東側の避難小屋前でビバークをするか、長めの休憩を取りながらしばらく考えました。
少し前に左足を捻っていましたが軽症です。
左アキレス腱に靴擦れが生じていましたが、そのままなら痛みも問題なさそうです。むしろ止まってケアした方が痛みそうです。
疲労度としてはゆっくりなら進めそうです。
冷えてきましたがレインウェアを着れば進めそうな気温と風です。
ふと、TJARの参加要件を思い出しました。標高2000m以上の所で4時間以上のビバーク泊10回以上の経験回数ってあったような、、、と。
進むために着込んだレインパンツはそのままに、避難小屋へ向かうことにしました。
月が登り始めていました。

避難小屋に小さな明かりと、その遠く向こうに月の光。15夜のお月さまです。
砂地の平たい場所にストックシェルターを建て湯を沸かし、α米とフリーズドライのカレーを作り、靴擦れのケアをし、ササっと諸事を済ませ20時就寝、0時起床の出発としました。
ダウンを着て寝ましたが、足先の寒さに途中目を覚ましました。足先対策を講じる必要を肌で感じます。
再出発は真夜中でした。
月が明るく、ゆっくりやるならその灯りで撤収作業ができそうでした。
しかし、忘れる物によってはレース続行不可となる場合もあると考え、遊びはやめてヘッデンで照らしながら、ゴミを残してないか、忘れ物がないか泊地を確認するところまでを丁寧にやりました。この癖付けは大切な事だと思っています。

月明かりの中歩く稜線は、遠くの沢の音とさらに遠くの飛行機の音、風の音、そして自分の足音のみの何とも言えない面白い場所でした。
寝ると回復することを実感しながら、それでもやっぱり熊沢岳や東川岳の登りは脚にこたえるなあとぼやきつつ、木曽殿小屋を目指します。
東川岳登りの前に、銀色のサバイバルブランケットに包まれた人型の様な物が登山道から外れた場所にあり、遭難者が夜を明かしてるんだろうか?と思い、遠くから迷惑かもしれないと思ったが「大丈夫ですか?」と大きな声で尋ねました。
「大丈夫です」とすぐに返答があったので通過するとことにしました。ビバークする所としては良い所に見えました。
2:00 木曽殿小屋に到着です。
すぐさま水補給のために真っ暗な小屋のテラスを抜け、空っぽの1Lプラティパスとストック二本を持ち義仲の水を汲みに行きました。
小さな岩を乗り越える時に膝を擦り、新品ゴアのレインパンツに穴が開いてしまったのが残念でしたが、同時に疲労で注意力が低下し散漫と歩いていることに、気を引き締め直すいい機会でした。
水汲みの後は、風裏でマットを敷いて20分ほど仮眠をし、ゴジラの背中のように浮かび上がる空木岳の稜線を登り始めました。
何かの情報で偽ピークがあると知っていたので、目の前のピークを、「あれは偽物、あれは嘘」と呟きながら、偽物と判明した時のショックを和らげようとしましたが、やっぱりショックでした。
思わず笑ってしまうピークの波状アタックを楽しみつつ
3:40 空木岳到着です。岩岩のシルエットがとてもかっこいい山でした。

ここから長い下りです。朝の7時に駒ヶ根スキー場着を目指しているので空木岳頂上は早めに通り過ぎます。
ここまでの反省として、景色のいい所で休む時間が長くなっていることを思っていました。
出発準備の人で賑わうヒュッテのテラスを通り抜け、駒石(たぶん)にタッチし、空木平避難小屋に後髪を引かれつつ、平地と下りは小走りに先を急ぎます。
そうしているうちに夜が明けてきました。
残念ながら樹林帯に入っていたため日の出は見られませんでしたが、木立の間を射す朝日に朝を迎えた嬉しさを感じられ、心ばかりスピードを上げて進みました。
6:05 迷い尾根到着です。地形図にショートカットルートを書き込んでいましたが、正規のルートを通ってしまいました。

カバンを下ろし補給を摂って長めの休憩としました。この時点で7時に駒ヶ根駅は諦め、8時に駒ヶ根スキー場に下方修正します。
ここからの下りは気持ちのよい小道だったように思います。
すでに何名かの登山者とすれ違っています

洗顔した水場

MTBで下ったら気持ちよさそう
登山口近くで12年TJAR完走者の阪田さんが登って来られるのを見かけました。有名な山には有名な方がいるんだなぁとすこしテンションがあがりました。
そしてアウトドアショップKにたどり着いたのは8:35でした。
さらっとアウトドアショップKと書きましたが、TJAR報告書で何回も目にしたODSKってここか!って嬉しくて、思わず写真を撮ってしまいました。

その後は近くの芝生で道具を乾燥させ、10時に開店したこまくさの湯で汗を流し、わざわざ持ってきた服に着替え、駒ヶ根駅に向かいました。
長い間悩みの種だった右膝の痛みが出なかったことが嬉しかったです。
バスを探しましたが、ここから駅までも下見だなと思い直し歩くことにしました。
これもまた報告書で書かれているだろうすき家やドラッグストアを横目にカフェで朝ごはんを食べ帰宅の途につきました。
こまくさの湯では、後で調べて分かったのですが偶然にもTJARキャンプ後の方が入浴されており、憧れのロゴがくっついたザックをいくつか見かけました。
駅に向かう道の途中では男澤さんもおられて、こんにちはと挨拶をすることができました。
再来年はキャンプに是非参加してみたいです。
行かない、行ってはダメだと思っていたアルプスですが、確実に行動圏内になってきています。10月は4連休を申請し、北か南を行こうと思ってます。
今回の旅をTJARに繋げられるよう今後も試行錯誤していきます。
(気をつけるところ)
地図にCPなど大切な情報は書き込む。
休憩をコンパクトに。
ストックの使い方に慣れる。
登りに使う筋肉の持久力強化。
足先の冷え対策。
足先トラブルの早めの対処。