レース3日目、8月13日。同じ場所で寝ていた2名の選手(保谷選手と田中選手)に少し遅れ5時ごろにスタート。天気予報は晴れ。目指すのは60㎞先の中央アルプス木曽駒ヶ岳コガラ登山口です。この日は道中に選手のオアシスと名高いスーパーマーケットまるとのほか、自販機やコンビニもあり、食欲を推進力に進むことができました。
グレンパークさわんどから奈川渡ダムの区間にも側道の狭い(ほんと狭い)トンネルがありましたが、早朝の上り車線は空いており、ジョギングで通過。過去一番早い通過に拍子抜けしたほどです。ダム駐車場で補給し、まだ日の低い時間に淡々と一定のペースで木曽に向け野麦街道を進みました。時々道行く方や地元の方に応援をいただきました。奈川渡ダムから10km先にあった桝屋商店では境峠前の長めの自販機休憩を取りました。お店の方からスイカを勧めてもらいましたが、ルール違反となるため我慢です。日が昇り暑さが増してきました。境峠9時50分通過。そこから藪原駅まで下り基調です。しばらく道路脇に生えている野いちごを摘みながら距離を忘れて歩きました。山菜やキノコを採りながら歩くと、いつの間にか山深く入り込んでしまうあの現象の応用です。ただひたすら暑く、日陰を求めて小走りから早歩きで黙々と進みました。道路脇に流れる水で帽子や服を浸し体を冷やすこと度々、選手OBの応援もありなんとかスーパーマーケットまるとに到着しました。ここは店長さんのご厚意で選手用の休憩スペースやアイシング用の氷バケツが用意してあります。冷房の効いた店内に飛び込むとそこはまさにオアシス。冷やしきしめんにシーチキン、揚げ餅、メロンに脱アルコールビール(アミノ酸たっぷりで疲労時に好適)を購入。追加で塩分補給用の味噌も。ともに進んできた選手とランチタイムです。雑誌の取材を受けたり、脚だけでなく頭も冷やしながら居心地が良すぎて90分も滞在してしまいました。
そしてまた炎天のもとへ。道路の電光掲示板には危険な暑さ、不要な外出は中止と表示されていました。チェックポイントである藪原駅を過ぎ、木曽路を南下します。途中のコンビニ一軒目でアイスを、二軒目ではスイーツやおにぎり、パン、この後命を救うミニカップ麺を購入。別荘地帯と抜けコガラ登山口手前のきらきらキャンㇷ゚場でお風呂に入り(汚い選手3人が集う脱衣所の様子は想像にお任せします)、シェルターを張って食事を済ませすぐに休みました。短めの3時間で起床。先の檜尾岳キャンプ場で追加仮眠予定とし、先に進んでいた選手を追うように真っ暗な福島Bコースを登り始めました。クマが怖いので奇声を上げ進みました。8合目水場で選手に追いついたときに雨が降り始めレインウェアを装着。玉乃窪山荘到着は14日の夜2時ごろでした。そこから先は風を遮るものがないためインナーとレインウエアを追加し、防寒手袋に交換。頂上木曽小屋からは雨に加えて霧が濃くなり、頂上を超えた辺りから体の冷えを感じ始めました。近くにいた選手も離れ、視界が悪い中わずかな遠くの明かりと地図を頼りに宝剣小屋に向かいました。徐々に体が冷えてきていました。有人チェックポイントである宝剣小屋に着いたのは2時50分。体が震えており低体温によるリタイアが頭をよぎります。スタッフの「TJARぽくなってきた(笑)」のコメントに、そういうレースだったなと思い直し、小屋の長期滞在は失格となるため、すっかり嵐の様相になっていた外に飛び出し、ビバーク態勢に入りました。体の震えが強くなる中過去最速でシェルターを張って中に飛び込みました。必死だったので気づきませんでしたが、この様子を動画に撮られていたことは後に動画が公開されて知りました。YouTubeでご覧ください。シェルター内では濡れた衣服を乾いたものに換え、持っていたすべてを着込み、ブドウ糖と水、さらに糖質を摂取、シュラフカバーにくるまって眠りました。
寒さで目が覚めると辺りは少し明るくなっていました。雨と風は止み、小屋泊から起きてこられた方の笑い声が響き、換気口から見る外には半袖で歩いている人が見えました。シェルターの薄い布地の内と外は別世界。思わず笑ってしまいました。震える体で湯を沸かし、麓で買ったカップ麺をこんなにうまいものはあったのか!という感動とともにいただきました。しばらくすると震えは収まり、泊まったのがキャンプ場でなかったためにきまりも悪く、麓で天候判断をし、仮眠ではなくしっかり休んでいれば陥らなかった事態に反省しつつ、そそくさとシェルターを畳んで出発しました。島田娘まで来ると気持ちは落ち着き、寝不足ながらも太陽の温かさに癒され、濡れた服を乾かしながら先に進むことができました。低体温から回復した体に寝不足が加わり、中央アルプス全般疲労感の多い縦走となりました。あまり景色は覚えていません。木曽殿小屋で水を買い、酷暑の中濡れたものを完全に乾かし、空木岳着は12時ごろ。駒石で10分の仮眠。小地獄の辺りで眠気と疲労と空腹の三重苦でレースを辞めたくなりましたが、その先にある駒ケ根での食事を思い浮かべて乗り越え、補給を摂ってしっかりと休み下山したのが16時30分でした。
ここで友人の応援を受け気持ちが回復。駆け足ですき家駒ケ根店に向かいました。試走時から決めていたメニューを注文し充電満タン。そこから先は南アルプスを越えるまで買い物できる店がないため最後のコンビニで二日分のご褒美和菓子を購入。この日駒ケ根付近は花火祭りだったので花火が見られるかなと同行の選手と話しながら先を急ぎます。と、ここにきて道路が川になるような大雨に。土砂降りの道を、ヘッドランプを灯し、花火を背に分杭峠方面に。その選手の様子をこれまたレーススタッフが興奮気味に写真に収めていたそうです。 時々すれ違う人が、傘も差さずに進む私たちの姿を怪しんで見ていました。天竜川を越えると人は減り雨脚も弱まってきました。徐々に暗くなる県道49号線を東へ。徐々に同行していた選手も離れ離れになり一人の時間となりました。
ただひたすらヘッドランプが照らす道を見つめ一歩一歩進みます。幻覚か幻聴を期待していましたが外れ。そのうち雨が止み中沢峠に到着。北に向きを変え市野瀬チェックポイントに着いたのは23時35分頃でした。低体温、酷暑、土砂降りと振り幅の大きな一日が終わりました。ここ市野瀬はあらかじめ自分で送っておいた荷物を受け取り、不要なものは返送できる重要なチェックポイントです。休憩用のスペースが確保されており、水平で雨のかからない5つ星ホテルのような所です。湿った服を干し、乾いた服を着て自分で用意した柔らかいマットで寝ることができます。OS1を飲み、アミノ酸を摂取、体を拭き、マッサージや携帯やバッテリーの充電をしながら書いておいたTODOリストに従って過ごし、いびきがうるさいと噂の選手から離れてぐっすり4時間半も眠ることができました。起きたらささみ肉と温かい力うどんを食べ、補給食を追加。レインウエアとシェルターも台風に備えて(台風接近予報が出ていた)より頑丈なものに交換。足ケア後用意していた乾いた靴を履き、トイレを済ませ、5時半、仙丈ヶ岳へ出発しました。
(レース中乳酸菌錠剤を摂取しており常に快便だったがこれは重要だと思う)TJARは南アルプスからが本番と言われています。長い地蔵尾根が始まりました。